2021 New Product Announcement

新設計ハルの性能紹介

The Latest Deep V Hull

このハル形状の狙いと効果

NJMは今回あえて得意のカタマラン型ではなく、V型ハルを採用しました。これは、船体が33.5フィートと大型であることで基本的に大きな安定性が得られることとスペースユーティリティーの高さを優先したことによります。また、新型ディープV型(船尾デッドライズ、約20°)を採用し、高速走行時の乗り心地と安定性を確保しました。近年は船外機が大型化、大馬力化していることに合わせ、最大3基の船外機が取り付けられるように配慮しています。

チャイン上のステム(船首)はあえて立たせることで、全長に対し、大きな水線長を確保させ、走行安定性と保針性、横風に対する船首流れにくさを向上させています。

Deep V Hull

新型ディープVハルによる波浪海面での走行性能の高さ

新型ディープVハルは一般的なフィッシングボート*の浅いVハルと比較して、航行中のクッション性がよく快適な乗り心地や航行効率の良さを実現しています。しかし当社が最も重要視していることは安全面への配慮であり、この新型ディープVハルについても安全第一で開発を行っています。

特に重要な特性としてあげられるのは、波浪海面が荒れた際の追い波によるブローチング(大きな波の力のために操縦不能となり回頭を続けながら傾斜し滑るように流される現象)への耐性が飛躍的に向上したことです。船底V角度の浅い小型ボートは横方向の水圧抵抗中心が比較的船首側に位置することが多く、波が高くなるとブローチングを起こしやすく、最悪の場合は転覆に至ることもあります。

ブローチング現象は船体重心位置と重力によるベクトルと、水面から受ける横方向水圧中心と水圧抵抗のベクトルによって発生し、その距離が大きいほどブローチングモーメントは大きく、つまりは制御不能に陥りやすくなります。新型ディープVハルではこの重心位置と水圧抵抗中心の距離が比較的小さくなるように船体設計を見直し、長年の経験を生かして最適なハル形状を導き出しました。

もちろん全くブローチングを起こさないボートは存在しませんので、操縦される方の安全な航行が前提となります。特に大きな馬力のエンジンを搭載する場合は安全に対して十分に配慮した操縦をしていただくことが全ての基本となります。

*当社比

Stepped Stripe

ステップ・ストライプ形状による低中速域での横安定性向上

今回のハル形状ではステップ・ストライプ形状を採用しました。これにより特に横揺れしやすい低速航行中や静止時に高い初期復原力をもたせ、抜群の安定感をもたらせることができます。

ステップ・ストライプの場合、水線幅(水面で切った平面の幅)は一般的なV型ハルの水線幅に対して広くなります。静止水面での復原力は水線幅の3乗に比例するため、静止時はもちろん低速時の横安定性が確実に増します。

Double Chain

ダブルチャインによる静止時安定性の向上

ダブルチャインは従来からある手法で、高速航行中の水線幅は狭くし、静止時の水線幅は広くすることで静止復原力を向上させることができます。高速時は航行抵抗を減少させ、静止時は横安定性の双方を向上させることに最も適した船型です。

NJMは安全性を追求し、古くからあるベーシックな技法と新しい技術を巧みに組み合わせ、船の全長や重心位置等の様々な要因を考慮して目標に最適な船型を開発しました。荒れた海域に囲まれた日本で長く船に関わってきた実績と経験があるからこそ創り出せる匠の技です。皆様のマリンライフがさらに充実し、安全で快適な海の時間を過ごしていただくため、日々努力を惜しまず研究開発を続けています。